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詩集『野のひかり』

 投稿者:中嶋康博  投稿日:2016年12月27日(火)20時47分16秒
  通報 編集済
  年末にうれしい贈り物ふたつ。
ここにても厚く御礼を申し上げます。ありがたうございます。

ひとつはネット上で初めて読んだ未知の詩人の詩に感じ入り突然の御挨拶、返礼にいただいた小網恵子様の詩集『野のひかり』です。
造本感覚がゆきとどいた装釘は、刊行元である水仁舎の、著者の作品に寄せられた厚意の感じられる淒楚なもので、活字の効果的使用には羨望を覚えました。私の好きな版型だけでなく扉の配色にも特段の親近を覚えたことでした。
さうして詩集を繙き、ネットでは紹介されてゐなかった詩の数々にふれ、思ったとほりの自然に対するまなざしに、後半の散文詩には寓意風の詩想の妙に、共感と親しみを新たにしました。
一見素朴にみえる自然な描写にこめられた雕琢が、よくわかります。

「野」

あの人が喋ると
ねこじゃらしが揺れる
相槌をうちながら
風の方向を感じていた

食卓に座れば
いつもわたしに向かって風は流れる
風下に風下に
種は飛ばされて
わたしの後ろに
ねこじゃらしの野が広がる

あの人が一つ大きく息をついた
話したことをもう一度反鈍するように
黙して
落とした肩の向こうで何か揺れた



『Crossroad of word』ホームページでいち早くこの詩集の紹介をされた管理人様の炯眼にもあらためて感心しました。
現代詩はみな、理に落ちぬ遠心的な措辞で煙に巻くことを性分にしてゐるものですが、「野」「五月」「ぐるり」など、言葉が作者の心情に回収され、抒情の表情として目を伏せたやうな心の持ちやうが、何とも言へない魅力になってゐます。 みなさんも手にとることのできる機会がありましたら是非。

年末に「この世界の片隅に」といふ素晴らしい映画に出会ひ、心が温まったところ、日ごろの憂さがしばし解きほぐされたやうな心地いたしました。

そしてもひとつ嬉しいいただき物は、石井頼子様からの新学社のカレンダー。
来年も「無事」に過ごせますことを切に祈りをります。
今年は色褪せですが、拙宅の廊下にも保田與重郎「羽丹生の柵」の複製を飾ることができました。

ついでに今年の収穫(いただきもの含む)を掲げて締め括りとします。
額は定めてはゐないですが本年の「図書費」は結果的にその半分を地元漢詩人の詩稿(オークション)に費やして終了。

白鳥郁郎詩集『しりうす』(田中克己校正)
まつもとかずや評論集『するり』(下町風俗資料館元館長)
宮田嘯臺 書幅
『山川京子歌集』 桃の会版
加藤千晴詩集『宣告』(然るべき先へ寄贈したら、奇蹟的に再び入手できました)
冨岡一成『江戸前魚食大全』 (下町風俗資料館元同僚)
戸田葆堂自筆日記『芸囱日彔』うんそうにちろく (来春4月お披露目予定)
河合東皐、木村寛齋 詩草稿
『果樹園』欠号さまざま
江泉正作詩集『花枳穀』限定15部
『自撰 一戸謙三詩集』
北園克衛小説集 『白昼のスカイスクレエパア』加藤仁編
詩誌『咱芙藍:サフラン』(福井県武生)大正15年


さて誰からの催促も反応もないライフワーク「田中克己戦後日記」ですが、
これまでは内容をそのまま載せることを原則としてをりましたが、東京時代に入り、親戚等のプライバシー情報は不要に感じられてきたので、
すでに翻刻と解説が終了してゐる昭和33年は、昭和34年を翻刻して様子をみながら、編集を施しゆるゆるupして参ります。よろしくお願ひを申上げます。


よいお年をおむかへください。

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