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今年の収穫から

 投稿者:中嶋康博  投稿日:2018年12月26日(水)22時28分6秒
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  〇舟山逸子『春の落葉』昭和53年。
丁度40年前1978年に刊行された第一詩集。今に変らぬ淒楚な抒情は、清潔ではあるけれどせつなさにふたがる気持にさせられる、といった方が合ってゐるかもしれません。
すこしばかり控えめに過ぎる自身の成長エピソードが20代でこんな具合に書けてしまふさびしさ。詩が生涯の心の支へになってしまふ所以であります。
著者とは手紙からやりとりさせて頂いて30年になりますが、我が詩的出発時に温かく同人誌に迎へ入れて下さった先輩詩人の真骨頂を、この年にして初見するとは、遅すぎました。

 不在

死んだ父の枕元で
白いかたまりになって うずくまっていた
ロニィは 小さな箱に入れられ
はるばる大阪まで運ばれてきた
二、三日はおびえたように 何も食べず
水ばかり飲んだ それから
どうしても なにかおかしいというように
私たちの顔をゆっくり見まわすのだ
そして 前足に黒い鼻先をつけて
くうくうと泣く
大阪に来てしまった私たちに抗議するように
くうくうと泣く
そうして泣いていると
父を呼んでいるとしか思えなくなって
せつなく 妹は
その頭をなぜてやりながら
うっすらと涙を浮かべるのだ
突然に父だけがいなくなった家族に囲まれて
ロニィは
父を追いかけて いってしまった
目を閉じたまま 私たちの呼ぶ声に
ゆっくりしっぽを振ってみせながら

ロニィよ
おまえは今も 九州の家の座敷で
父の大きな手に その前足をかけて
ちゃんとお手をしているか
ハムなどもらっているか
ロニィよ 今日も
父を見送った玄関先で
ワンと吠えているか
私たちが ときどき
胸の奥で思い出しては
ひそかに涙をこらえている かつての生活を
遠い空のどこかで
そうして 父と 続けているか



〇冨岡一成『ぷらべん 88歳の星空案内人 河原郁夫』
これまた30年来の友人の新著。斯界の生き字引である河原先生への「聞き書き」をもとに、小説・ドキュメンタリー・エッセイのかたちを借りたそれぞれの「章」と、そして季節ごとの「星空解説」によって構成された、全体がプラネタリウムの如く投影するファンタジーです。

河原郁夫先生はことし米寿を迎える。「八十八=米」のお祝いだけれど、天文ファンには八十八なら星座の数だ。ひそかにこれを星寿のお祝いとおよろこびし、このお目出度いさなかに先生の本を世に送りだせることに、おおきな幸せを感じている。「あとがき」より


〇亀井俊介『若い日に読んだ詩と詩人』平成30年。この本については、別に解説と内容をupしてあります。こちらよりご覧ください


〇風間克美『地方私鉄 1960年代の回想』平成30年。
〇今井誉次郎(たかじろう)『おさるのキーコ』昭和37年。
ともに道路が舗装してなく、水たまりだらけだった懐かしい昭和30年代の日本の記録。
『おさるのキーコ』は、小学校3年の時、担任の先生から、教室に据えてあった本箱の中から買ふやうすすめられ、選んだ最初の一冊でした。
岐阜県出身の、いかにも綴り方教育畑らしい先生が書いた、日本の田舎くさい子供たちの姿を描いた童話です。


ほかにも
〇吉村比呂詩『白い人形』昭和8年『雪線に描く』昭和10年。飛騨清見村のモダニズム詩人。
〇伊福部隆彦『無為隆彦詩集』昭和36年。書道界に薀蓄一家言ある詩人の自筆詩集200部非売折帖版。
〇深田精一『黙々餘聲』弘化2年刊行、幕末名古屋の漢詩人。茶書にて有名。
〇梁川星巌の処女詩集『西征詩』文政12年正月版。
〇村瀬藤城「天王山(美濃市大矢田)観紅葉之詩」掛軸。

などの古書類を購入しました。年額は20~10年前の全盛期から較べると1/4以下になりました。
 
 
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